@IDX:35901
@OFF:0x65
@SPK:［女の声］
@JPN:　あら？　まだここにいらしたんですか？
@ENG:

@IDX:35903
@OFF:0xe3
@SPK:［女の声］
@JPN:　あら？　こんなところでどうされたんですか？
@ENG:

@IDX:35906
@OFF:0x145
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:35909
@OFF:0x247
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、御堂……さん……。
@ENG:

@IDX:35911
@OFF:0x31c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　なっ！？　顔が真っ赤じゃないですか！　それに、酷い汗……もしかして、ずっとここに？
@ENG:

@IDX:35914
@OFF:0x3a6
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ……まあ……。あ……今、何時、ですか……？
@ENG:

@IDX:35916
@OFF:0x48f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ちょうどお昼を廻ったところですけど……。
@ENG:

@IDX:35919
@OFF:0x4ef
@SPK:[\protag]
@JPN:　……もう、そんな時間です……か……。そろそろ、部屋に……戻らないと…………。
@ENG:

@IDX:35922
@OFF:0x615
@SPK:[\protag]
@JPN:　あれ？
@ENG:

@IDX:35924
@OFF:0x660
@SPK:［悠紀］
@JPN:　大丈夫ですか！？　しっかりしてください！！
@ENG:

@IDX:35927
@OFF:0x6c2
@SPK:[\protag]
@JPN:　おかしい、な……。なんか、身体が……フワフワしてる……。それに、頭がズキズキして……。
@ENG:

@IDX:35929
@OFF:0x7d3
@SPK:［悠紀］
@JPN:　とにかく、急いで涼しいところへ……大丈夫ですか？　立てますか？
@ENG:

@IDX:35932
@OFF:0x849
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、何とか……フラフラする、けど。
@ENG:

@IDX:35934
@OFF:0x8b2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　じゃあ、私に掴まってください。
@ENG:

@IDX:35935
@OFF:0x9c5
@SPK:
@JPN:　どうやら、熱中症になりかけていたらしい。
@ENG:

@IDX:35936
@OFF:0x9fd
@SPK:
@JPN:　長い間、強い陽光の下にいたためか、日陰に入った　途端に世界の色が反転したような……そんな錯覚を　起こした。
@ENG:

@IDX:35937
@OFF:0xa87
@SPK:
@JPN:　御堂さんに連れられてきた場所は、病院を取り囲む　雑木林の中。
@ENG:

@IDX:35938
@OFF:0xad3
@SPK:
@JPN:　おそらく、ここには滅多に人が来ないのだろう。
@ENG:

@IDX:35939
@OFF:0xb0f
@SPK:
@JPN:　途中から遊歩道は土に埋まり、気をつけていないと　周りの地面と区別がつかなくなっていた。
@ENG:

@IDX:35940
@OFF:0xbbe
@SPK:
@JPN:　……まただ。
@ENG:

@IDX:35941
@OFF:0xbec
@SPK:
@JPN:　御堂さんは今、飲み物を買いに行っている。
@ENG:

@IDX:35942
@OFF:0xc24
@SPK:
@JPN:　ここには、僕一人しかいない。
@ENG:

@IDX:35943
@OFF:0xc62
@SPK:
@JPN:　なのに、誰かが笑っているのが聞こえる。
@ENG:

@IDX:35944
@OFF:0xc98
@SPK:
@JPN:　耳を塞いでも、直接頭に響いてくる声……。
@ENG:

@IDX:35945
@OFF:0xcd0
@SPK:
@JPN:　人を蔑み、嘲るような、そんな声……。
@ENG:

@IDX:35946
@OFF:0xd16
@SPK:
@JPN:　……誰が笑っているんだ？
@ENG:

@IDX:35947
@OFF:0xd3e
@SPK:
@JPN:　……何が可笑しい？
@ENG:

@IDX:35948
@OFF:0xde3
@SPK:
@JPN:　広場を囲む木々の間から吹き込む微風が、火照った　肌を優しく撫でてゆく。
@ENG:

@IDX:35949
@OFF:0xe39
@SPK:
@JPN:　僕を包み込む木漏れ日は、焼けついた目をその緑で　癒してくれる。
@ENG:

@IDX:35950
@OFF:0xe87
@SPK:
@JPN:　丸太でできたベンチの素朴な感触も、横たわる僕の　気分を落ち着かせ、和らいだ気持ちにさせる。
@ENG:

@IDX:35951
@OFF:0xef1
@SPK:
@JPN:　病院で働き始めて随分経つが、こんな場所があると　は知らなかった。
@ENG:

@IDX:35952
@OFF:0xf53
@SPK:
@JPN:　……耳には、蝉の声。
@ENG:

@IDX:35953
@OFF:0xf7d
@SPK:
@JPN:　……
@ENG:

@IDX:35954
@OFF:0xf8f
@SPK:
@JPN:……
@ENG:

@IDX:35955
@OFF:0xf9f
@SPK:
@JPN:……
@ENG:

@IDX:35957
@OFF:0xfc9
@SPK:……。
@JPN:　あの笑い声は……聞こえない……。
@ENG:

@IDX:35958
@OFF:0x1009
@SPK:
@JPN:　いや、それとも元からそんなものは存在しなかった　のか……。
@ENG:

@IDX:35959
@OFF:0x1053
@SPK:
@JPN:　全身に染み入る緑に心を静めていると、そう思えて　くる。
@ENG:

@IDX:35960
@OFF:0x10a5
@SPK:
@JPN:　おそらくは、僕の心の弱さが生み出した妄想だった　のだろう。
@ENG:

@IDX:35961
@OFF:0x10ef
@SPK:
@JPN:　自分の今の境遇、世間体の悪い仕事に従事している　という後ろめたさ、そして、その仕事の過酷さ。
@ENG:

@IDX:35962
@OFF:0x115b
@SPK:
@JPN:　日頃から心深くに澱のように蓄積されていた鬱屈が　今日の死体から受けたショックで噴出した。
@ENG:

@IDX:35963
@OFF:0x11c3
@SPK:
@JPN:　だから、あんな被害妄想に憑かれてしまった。
@ENG:

@IDX:35964
@OFF:0x11fd
@SPK:
@JPN:　……そういうことなのだろう。
@ENG:

@IDX:35966
@OFF:0x12f0
@SPK:［悠紀］
@JPN:　お待たせしました。これ、飲んでください。
@ENG:

@IDX:35969
@OFF:0x1350
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、すみません……。
@ENG:

@IDX:35970
@OFF:0x13ab
@SPK:
@JPN:　御堂さんが戻ってくると、あの僕を嘲るような笑い　声は聞こえなくなった。
@ENG:

@IDX:35971
@OFF:0x1401
@SPK:
@JPN:　一体なんなんだろう、あの笑い声は。
@ENG:

@IDX:35973
@OFF:0x1567
@SPK:［悠紀］
@JPN:　もう、どうしてあんな場所に何時間もいたんですか？　それも日除けもしないで……。
@ENG:

@IDX:35976
@OFF:0x15ed
@SPK:[\protag]
@JPN:　さあ……気づいたら時間が経ってたとしか……。
@ENG:

@IDX:35978
@OFF:0x165e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あのまま、熱中症で倒れていたかもしれないんですよ？　私が気づかなかったら、どうするつもりだったんですか？
@ENG:

@IDX:35981
@OFF:0x16fe
@SPK:[\protag]
@JPN:　……面目ない……。
@ENG:

@IDX:35983
@OFF:0x17cb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:35986
@OFF:0x180d
@SPK:[\protag]
@JPN:　……御堂さん？
@ENG:

@IDX:35988
@OFF:0x1860
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……やっぱり、あの仕事のせいですか？
@ENG:

@IDX:35991
@OFF:0x18bc
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:35993
@OFF:0x1909
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……仕事のことで、悩んでいたんでしょう？
@ENG:

@IDX:35996
@OFF:0x1969
@SPK:[\protag]
@JPN:　……ええ、まあ……。
@ENG:

@IDX:35998
@OFF:0x19c2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:36001
@OFF:0x1a04
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:36003
@OFF:0x1acd
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……そんなにつらいなら……。
@ENG:

@IDX:36006
@OFF:0x1b21
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:36008
@OFF:0x1b6e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そんなにつらいなら、辞めてしまえばいいのに……。
@ENG:

@IDX:36011
@OFF:0x1bd6
@SPK:[\protag]
@JPN:　なっ！？　急に何を？
@ENG:

@IDX:36013
@OFF:0x1ca5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　だってそうでしょう？　……身体を壊して、精神的に傷ついて……そこまでしなくても、お金を稼ぐことはできます。あの仕事ほど、お給料は高くないでしょうけど……。
@ENG:

@IDX:36016
@OFF:0x1d77
@SPK:[\protag]
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:36018
@OFF:0x1dca
@SPK:［悠紀］
@JPN:　でも、つらい思いをするよりはいいじゃないですか！？
@ENG:

@IDX:36019
@OFF:0x1e3b
@SPK:
@JPN:　悲痛な……初めて聞く、感情から生まれた声。
@ENG:

@IDX:36020
@OFF:0x1e75
@SPK:
@JPN:　悲鳴にも似た、それでいて静かな言葉……。
@ENG:

@IDX:36021
@OFF:0x1ead
@SPK:
@JPN:　……それは、僕を気遣う彼女の、偽らざる本心なの　だろう。
@ENG:

@IDX:36022
@OFF:0x1f03
@SPK:
@JPN:　だが……。
@ENG:

@IDX:36023
@OFF:0x1f1d
@SPK:
@JPN:　辞めるわけにはいかない。
@ENG:

@IDX:36024
@OFF:0x1f45
@SPK:
@JPN:　……あの笑い声は、もう聞こえない。
@ENG:

@IDX:36025
@OFF:0x1f77
@SPK:
@JPN:　僕の心の澱から生まれた妄想。
@ENG:

@IDX:36026
@OFF:0x1fa3
@SPK:
@JPN:　ここで辞めてしまったら、己の弱さに負けることに　……自分の夢を放棄することになる。
@ENG:

@IDX:36027
@OFF:0x2017
@SPK:
@JPN:　……あの笑い声は、もう聞こえない。
@ENG:

@IDX:36028
@OFF:0x2049
@SPK:
@JPN:　僕は、もう大丈夫だ……。
@ENG:

@IDX:36030
@OFF:0x212e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ごめんなさい。あなたに辞めて欲しいわけじゃないんです……ただ……。
@ENG:

@IDX:36033
@OFF:0x21a8
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、もちろん分かってます。ありがとうございます……心配してくれて……。でも、僕ならもう大丈夫です。
@ENG:

@IDX:36035
@OFF:0x22c7
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そう……ですか……。
@ENG:

@IDX:36038
@OFF:0x2313
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。あの仕事……続けます。最後まで……。
@ENG:

@IDX:36040
@OFF:0x2382
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:36043
@OFF:0x23c4
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ……それより御堂さん。お時間の方、よろしいんですか？
@ENG:

@IDX:36045
@OFF:0x24b5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:36046
@OFF:0x2555
@SPK:
@JPN:　いけない、もうこんな時間！
@ENG:

@IDX:36047
@OFF:0x2603
@SPK:
@JPN:　あ……でも大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:36050
@OFF:0x2653
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ……。まだ少しクラクラしますけど、これくらいなら平気です。
@ENG:

@IDX:36052
@OFF:0x274c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……でも油断は禁物ですよ。私は戻りますが、もう少しこちらで休んでいってください。
@ENG:

@IDX:36055
@OFF:0x27de
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうします。色々ご迷惑をおかけしました。
@ENG:

@IDX:36057
@OFF:0x284b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいえ、気にしないでください。では……。
@ENG:

@IDX:36060
@OFF:0x28d5
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ！　待ってください！
@ENG:

@IDX:36062
@OFF:0x299e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　どうしたんですか？　ひょっとして、また具合が……。
@ENG:

@IDX:36065
@OFF:0x2a08
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、いえ……あの……飲み物のお金を……。
@ENG:

@IDX:36067
@OFF:0x2aeb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　なんだ……それくらい、いいんですよ。
@ENG:

@IDX:36070
@OFF:0x2b47
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:36072
@OFF:0x2b96
@SPK:［悠紀］
@JPN:　本当に気にしないでください。大した額じゃありませんから。いつも頑張ってるご褒美だと思って受け取ってください。
@ENG:

@IDX:36075
@OFF:0x2c3a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……分かりました。その代わりと言っては何ですけど、今の仕事が終わったら食事でもごちそうさせてください。
@ENG:

@IDX:36077
@OFF:0x2d5b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　えっ？　でも……。
@ENG:

@IDX:36080
@OFF:0x2da5
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、二人でってことじゃなくって、その……真魚も一緒にどうですか？　打ち上げみたいな感じで……。
@ENG:

@IDX:36082
@OFF:0x2ebe
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、そういうことなら……。期待して待ってますね。では、お昼休みが終わってしまうので……。
@ENG:

@IDX:36085
@OFF:0x2f4e
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。引き留めてすみませんでした。
@ENG:

@IDX:36086
@OFF:0x2fc2
@SPK:
@JPN:　御堂さんが姿を消すと、ベンチに腰を下ろした。
@ENG:

@IDX:36087
@OFF:0x2ffe
@SPK:
@JPN:　いつの間にか、こめかみに居座り続けていた重さは　消えていた。
@ENG:

@IDX:36088
@OFF:0x3058
@SPK:
@JPN:　飲みかけのペットボトルをあおりながら、明日から　に思いを巡らせる。
@ENG:

@IDX:36089
@OFF:0x30aa
@SPK:
@JPN:　これから、どんな死体を目にすることになるのか、　それは分からない。
@ENG:

@IDX:36090
@OFF:0x30fc
@SPK:
@JPN:　だが、僕は与えられた仕事をこなすだけだ。
@ENG:

@IDX:36091
@OFF:0x3134
@SPK:
@JPN:　自分の心を確かに持てば、どのような予期せぬ事態　が起きたとしても、恐れることはないだろう。
@ENG:

@IDX:36092
@OFF:0x31ae
@SPK:
@JPN:　辺りを包むのは、耳に染み渡る蝉の声……。
@ENG:

@IDX:36093
@OFF:0x31e6
@SPK:
@JPN:　それと、木々の微かなざわめき……。
@ENG:

@IDX:36094
@OFF:0x3218
@SPK:
@JPN:　もう一度、確認するように呟いて、雑木林をあとに　する。
@ENG:

@IDX:36095
@OFF:0x325e
@SPK:
@JPN:　……僕は、もう大丈夫だ。
@ENG:

@IDX:36096
@OFF:0x32ad
@SPK:
@JPN:　悲鳴にも似た、それでいて静かな言葉が、御堂さん　の唇から絞り出される。
@ENG:

@IDX:36097
@OFF:0x3303
@SPK:
@JPN:　悲痛な……初めて聞く、感情から生まれた声。
@ENG:

@IDX:36098
@OFF:0x3347
@SPK:
@JPN:　だが…………。
@ENG:

@IDX:36099
@OFF:0x338b
@SPK:
@JPN:　どうして、辞めろなんて言うんだ！？
@ENG:

@IDX:36102
@OFF:0x3401
@SPK:[\protag]
@JPN:　……ひょっとして、僕に出て行って欲しいんですか？
@ENG:

@IDX:36104
@OFF:0x34ec
@SPK:［悠紀］
@JPN:　え？　そ、そんなこと……私はただ……。
@ENG:

@IDX:36107
@OFF:0x354a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうですよね。僕なんかよりきれいに洗える鏑木さんの方がいいに決まってますもんね……。
@ENG:

@IDX:36109
@OFF:0x365d
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ち、違います！　そんなことは思ってません！
@ENG:

@IDX:36112
@OFF:0x36bf
@SPK:[\protag]
@JPN:　嘘だ！！　なら、何で辞めればいいなんて言うんだ！？　僕は頑張ってるのに！！
@ENG:

@IDX:36114
@OFF:0x374e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　落ち着いて、私の話を……きゃっ！？
@ENG:

@IDX:36116
@OFF:0x38c9
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ……どうして、こんな……。
@ENG:

@IDX:36119
@OFF:0x391d
@SPK:[\protag]
@JPN:　御堂さんも、陰では僕のことを笑ってるんだろ？
@ENG:

@IDX:36122
@OFF:0x3981
@SPK:[\protag]
@JPN:　いつまでもウジウジしてる僕を見て笑ってるんだろ？
@ENG:

@IDX:36125
@OFF:0x39e9
@SPK:[\protag]
@JPN:　面倒な相手を押しつけられたって、そう思ってるんだろ？
@ENG:

@IDX:36128
@OFF:0x3a55
@SPK:[\protag]
@JPN:　だから僕を辞めさせたいんだ……。
@ENG:

@IDX:36131
@OFF:0x3aad
@SPK:[\protag]
@JPN:　だから僕を出て行かせたいんだ……。
@ENG:

@IDX:36134
@OFF:0x3b07
@SPK:[\protag]
@JPN:　なんでみんなして、僕を笑うんだよ！！　なんで……！！
@ENG:

@IDX:36136
@OFF:0x3c21
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……私、あなたのことを笑ったりはしてませんよ？
@ENG:

@IDX:36139
@OFF:0x3c87
@SPK:[\protag]
@JPN:　嘘だ！！　じゃあ、どうして辞めろなんて言うんだよ！？
@ENG:

@IDX:36141
@OFF:0x3d00
@SPK:［悠紀］
@JPN:　辞めさせようなんてつもりで言ったんじゃないんです。ただ、あなたがつらそうに……壊れてしまいそうに見えたから……。
@ENG:

@IDX:36144
@OFF:0x3da8
@SPK:[\protag]
@JPN:　嘘だ、そんなの！！　今だって僕を嘲笑ってるじゃないか！！分かってるんだ！！　僕には聞こえるんだ！！
@ENG:

@IDX:36146
@OFF:0x3e4f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:36149
@OFF:0x3e95
@SPK:[\protag]
@JPN:　聞こえるんだ……笑い声が……。
@ENG:

@IDX:36152
@OFF:0x3f9d
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:36154
@OFF:0x3fe6
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……そのまま聞いてください……落ち着いて……。
@ENG:

@IDX:36156
@OFF:0x4059
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいですか？　よく聞いてくださいね？　あなたの思ってることは、みんな悪い夢なんです……。
@ENG:

@IDX:36159
@OFF:0x40e9
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、僕には聞こえたんだ……僕を馬鹿にする笑い声が……。
@ENG:

@IDX:36161
@OFF:0x4166
@SPK:［悠紀］
@JPN:　みんな幻ですよ。あなたはきっと疲れてるんです。心も身体も……あのお仕事のせいで……。
@ENG:

@IDX:36164
@OFF:0x41f2
@SPK:[\protag]
@JPN:　あれが、幻……？　そんなこと……。
@ENG:

@IDX:36166
@OFF:0x4259
@SPK:［悠紀］
@JPN:　耳を澄ませて聞いてください……私、笑ってますか？　笑ってないですよね？
@ENG:

@IDX:36169
@OFF:0x42d7
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:36171
@OFF:0x4326
@SPK:［悠紀］
@JPN:　みんな同じです……あなたのことを笑ってる人なんて、一人もいません。
@ENG:

@IDX:36174
@OFF:0x43a0
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:36176
@OFF:0x43ef
@SPK:［悠紀］
@JPN:　たとえホントに笑っている人がいても……そんな人には、私が文句を言ってあげます。たとえ相手が誰であろうと、私があなたの味方になってあげます。
@ENG:

@IDX:36179
@OFF:0x44b1
@SPK:[\protag]
@JPN:　……信じ……られない……。
@ENG:

@IDX:36181
@OFF:0x4510
@SPK:［悠紀］
@JPN:　じゃあ、信じられるまで……こうしていてあげます。
@ENG:

@IDX:36182
@OFF:0x4584
@SPK:
@JPN:　御堂さんの指が、僕の髪にそっと差し込まれる。
@ENG:

@IDX:36183
@OFF:0x45c0
@SPK:
@JPN:　白衣越しに伝わる、柔らかくて温かい感触。
@ENG:

@IDX:36184
@OFF:0x45f8
@SPK:
@JPN:　すぐ側には、彼女の吐息すら感じられる。
@ENG:

@IDX:36185
@OFF:0x4640
@SPK:
@JPN:　呼吸のたびに上下する双丘……。
@ENG:

@IDX:36186
@OFF:0x466e
@SPK:
@JPN:　白衣越しに立ち上る、清潔感に溢れた香り……。
@ENG:

@IDX:36187
@OFF:0x46aa
@SPK:
@JPN:　そして、そっと髪をくしけずる指先……。
@ENG:

@IDX:36188
@OFF:0x46f2
@SPK:
@JPN:　温かい……。
@ENG:

@IDX:36189
@OFF:0x470e
@SPK:
@JPN:　温かくて、安らぎを感じる……。
@ENG:

@IDX:36190
@OFF:0x473c
@SPK:
@JPN:　彼女の優しさを肌で感じる……。
@ENG:

@IDX:36191
@OFF:0x477a
@SPK:
@JPN:　頭の中に響いていた、僕を嘲笑う声……。
@ENG:

@IDX:36192
@OFF:0x47b0
@SPK:
@JPN:　負の感情を掻き立てる、あの不愉快な声……。
@ENG:

@IDX:36193
@OFF:0x47ea
@SPK:
@JPN:　……もう聞こえない。
@ENG:

@IDX:36194
@OFF:0x480e
@SPK:
@JPN:　聞こえるのは、彼女の心音だけ……。
@ENG:

@IDX:36195
@OFF:0x4850
@SPK:
@JPN:　確かな人の温もりの存在を伝える鼓動……。
@ENG:

@IDX:36196
@OFF:0x4888
@SPK:
@JPN:　……幻ではない、御堂さんの温もり。
@ENG:

@IDX:36197
@OFF:0x48ba
@SPK:
@JPN:　温かい羊水に守られていた原初の記憶を呼び起こす　ような……そんな安らぎ。
@ENG:

@IDX:36198
@OFF:0x4912
@SPK:
@JPN:　ささくれ立った心が、癒されてゆく……。
@ENG:

@IDX:36199
@OFF:0x495a
@SPK:
@JPN:　御堂さんは、笑ってなどいなかった。
@ENG:

@IDX:36200
@OFF:0x498c
@SPK:
@JPN:　多分誰も、僕のことを笑ってはいない。
@ENG:

@IDX:36201
@OFF:0x49c0
@SPK:
@JPN:　僕自身を除いて……。
@ENG:

@IDX:36204
@OFF:0x4a26
@SPK:[\protag]
@JPN:　フフ……ハハハ……何だ、そういうことか……。
@ENG:

@IDX:36206
@OFF:0x4b53
@SPK:［悠紀］
@JPN:　どうしたんですか？　急に笑い出して……。
@ENG:

@IDX:36209
@OFF:0x4bb3
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕だったんだ……笑ってたのも、辞めるのを望んでいたのも、全部僕自身だったんだ……。
@ENG:

@IDX:36211
@OFF:0x4c4a
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、あの……？
@ENG:

@IDX:36214
@OFF:0x4c90
@SPK:[\protag]
@JPN:　大丈夫です……僕はもう大丈夫ですから……。
@ENG:

@IDX:36216
@OFF:0x4cff
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……はい。
@ENG:

@IDX:36217
@OFF:0x4d8e
@SPK:
@JPN:　笑い声……。
@ENG:

@IDX:36218
@OFF:0x4daa
@SPK:
@JPN:　僕を苛立たせた、あの嘲笑……。
@ENG:

@IDX:36219
@OFF:0x4dd8
@SPK:
@JPN:　そんなものは存在しなかった。
@ENG:

@IDX:36220
@OFF:0x4e04
@SPK:
@JPN:　おそらくは、僕の心の弱さが生み出した妄想だった　のだろう。
@ENG:

@IDX:36221
@OFF:0x4e5a
@SPK:
@JPN:　自分の今の境遇、世間体の悪い仕事に従事している　という後ろめたさ、そして、その仕事の過酷さ。
@ENG:

@IDX:36222
@OFF:0x4ec6
@SPK:
@JPN:　その仕事……死体洗いを、心は完全には受け入れて　いなかった。
@ENG:

@IDX:36223
@OFF:0x4f12
@SPK:
@JPN:　心が抱えたジレンマが、幻聴となって現れた。
@ENG:

@IDX:36224
@OFF:0x4f4c
@SPK:
@JPN:　日頃から心深くに澱のように蓄積されていた鬱屈が　今日の死体に受けたショックで決壊し噴出した。
@ENG:

@IDX:36225
@OFF:0x4fb8
@SPK:
@JPN:　だから、あんな被害妄想に憑かれてしまった。
@ENG:

@IDX:36226
@OFF:0x4ff2
@SPK:
@JPN:　……そういうことなのだろう。
@ENG:

@IDX:36229
@OFF:0x5112
@SPK:[\protag]
@JPN:　……すみませんでした。あの、怪我はありませんか？
@ENG:

@IDX:36231
@OFF:0x5187
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ええ、大丈夫です。
@ENG:

@IDX:36234
@OFF:0x51d1
@SPK:[\protag]
@JPN:　良かった……本当にすみませんでした。いまさら遅いかもしれませんけど……。
@ENG:

@IDX:36236
@OFF:0x525e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いえ、いいんですよ……でも、あの……。
@ENG:

@IDX:36239
@OFF:0x52bc
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　ああ、もう心配いりませんよ。急に飛びかかったりしませんから。
@ENG:

@IDX:36241
@OFF:0x53b9
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……良かった……。
@ENG:

@IDX:36243
@OFF:0x5494
@SPK:［悠紀］
@JPN:　でも、こんな場所で、いきなり……その、押し倒されちゃったから……ちょっと覚悟しちゃいました……。
@ENG:

@IDX:36247
@OFF:0x5598
@SPK:[\protag]
@JPN:ごめんなさい。
@ENG:

@IDX:36249
@OFF:0x565f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいんですよ、誰だって魔が差すことはあるんですから。あんまり恐縮されたら、こっちまで恥ずかしくなっちゃいます。
@ENG:

@IDX:36252
@OFF:0x5705
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、僕が悪いのは事実ですから。本当にすみませんでした。
@ENG:

@IDX:36254
@OFF:0x57f8
@SPK:［悠紀］
@JPN:　悪いってことを自覚してくれていれば安心です。それより……本当に大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:36257
@OFF:0x587c
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　はい。多分……。
@ENG:

@IDX:36259
@OFF:0x594d
@SPK:［悠紀］
@JPN:　多分？　そんな曖昧じゃ困るんですけど……それに、さっきは急に笑い出しましたし……。
@ENG:

@IDX:36262
@OFF:0x59d7
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ……あれは、全部自分だったんだなって気づいたら可笑しくなっちゃって……。
@ENG:

@IDX:36264
@OFF:0x5a68
@SPK:［悠紀］
@JPN:　全部自分？　どういう意味ですか？
@ENG:

@IDX:36267
@OFF:0x5ac0
@SPK:[\protag]
@JPN:　辞めさせたいのも、馬鹿にして笑っているのも……結局、全部僕自身だったんですよ。
@ENG:

@IDX:36269
@OFF:0x5b53
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あなた……自身……。
@ENG:

@IDX:36272
@OFF:0x5b9f
@SPK:[\protag]
@JPN:　辞めたいって思ってるのは僕自身、いつまでもウジウジと悩んでる僕を笑っているのも僕自身……。それに気づいたら、妄想にイライラしてた自分が可笑しくて……。
@ENG:

@IDX:36275
@OFF:0x5c6d
@SPK:[\protag]
@JPN:　……って、御堂さんにとっては、可笑しいで済むような話じゃありませんでしたね……本当にすみませんでした。
@ENG:

@IDX:36277
@OFF:0x5d8e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　もう謝らないでください。さっきのは全部、悪い夢のせいなんですから……。
@ENG:

@IDX:36280
@OFF:0x5e0c
@SPK:[\protag]
@JPN:　……悪い夢なら、また見るかもしれませんよね？
@ENG:

@IDX:36282
@OFF:0x5ef3
@SPK:［悠紀］
@JPN:　もし、また悪い夢を見たら……その時は、一人で悩まないで私に相談してください。
@ENG:

@IDX:36285
@OFF:0x5f77
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……もしかしたらまた、僕はあんなことを……。
@ENG:

@IDX:36287
@OFF:0x6062
@SPK:［悠紀］
@JPN:　その時はその時です。また私があなたを止めてあげます。
@ENG:

@IDX:36290
@OFF:0x60ce
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……もし、僕が夢から醒めなかったら……。
@ENG:

@IDX:36292
@OFF:0x61b5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そしたら……その時は仕方ありません。
@ENG:

@IDX:36295
@OFF:0x6211
@SPK:[\protag]
@JPN:　し、仕方ありませんって……。御堂さん、それがどんなことになるか分かってるんですか？
@ENG:

@IDX:36297
@OFF:0x62a8
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ええ。分かってます。
@ENG:

@IDX:36298
@OFF:0x6350
@SPK:
@JPN:クスッ……でも、そうなったら、優しく最後までエスコートしてくださいね。
@ENG:

@IDX:36301
@OFF:0x63cc
@SPK:[\protag]
@JPN:　うっ……そ、そんな。
@ENG:

@IDX:36303
@OFF:0x649b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　信じてますから。あなたのこと。
@ENG:

@IDX:36306
@OFF:0x64f1
@SPK:[\protag]
@JPN:　わ、分かりました……そうならないように努力します……。
@ENG:

@IDX:36308
@OFF:0x65e2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……クスッ。では私、そろそろ戻ります。
@ENG:

@IDX:36311
@OFF:0x6640
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。あ、でもその格好……背中、汚しちゃいましたね……。
@ENG:

@IDX:36313
@OFF:0x6733
@SPK:［悠紀］
@JPN:　病院に戻ったら着替えるから大丈夫です。でも、あなたはもう少しここで休んでいってくださいね。熱中症は怖いんですから。
@ENG:

@IDX:36316
@OFF:0x67dd
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。色々ご心配をおかけしました。
@ENG:

@IDX:36318
@OFF:0x686e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あっ！
@ENG:

@IDX:36319
@OFF:0x68fe
@SPK:
@JPN:　最後に一つだけ……。
@ENG:

@IDX:36322
@OFF:0x694a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……？　何ですか？
@ENG:

@IDX:36324
@OFF:0x6a17
@SPK:［悠紀］
@JPN:　私が味方だって言ったこと、忘れないでくださいね？
@ENG:

@IDX:36327
@OFF:0x6a7f
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はい。絶対に忘れません。
@ENG:

@IDX:36329
@OFF:0x6b56
@SPK:［悠紀］
@JPN:　クスッ。じゃあ、今度こそ本当に失礼します。
@ENG:

@IDX:36330
@OFF:0x6bd2
@SPK:
@JPN:　御堂さんが姿を消すと、ベンチに腰を下ろした。
@ENG:

@IDX:36331
@OFF:0x6c0e
@SPK:
@JPN:　いつの間にか、こめかみに居座り続けていた重さは　消えていた。
@ENG:

@IDX:36332
@OFF:0x6c68
@SPK:
@JPN:　それにしても、先程のことを思い出すだけで顔から　火が出そうになる。
@ENG:

@IDX:36333
@OFF:0x6cba
@SPK:
@JPN:　御堂さんの胸に顔を埋め、白衣越しにその柔らかな　感触を味わい……。
@ENG:

@IDX:36334
@OFF:0x6d0c
@SPK:
@JPN:　錯乱した直後だったとは言え、最後の一線を越えず　に済んだことが奇跡に思える。
@ENG:

@IDX:36335
@OFF:0x6d81
@SPK:
@JPN:　きっと御堂さんへの感情が、最後の一瞬ブレーキの　役目を果たしたのだろう。
@ENG:

@IDX:36336
@OFF:0x6dd9
@SPK:
@JPN:　そうでなければ、僕のような男があの状況において　我慢できるはずがない。
@ENG:

@IDX:36337
@OFF:0x6e2f
@SPK:
@JPN:　我慢できるなら、副院長の誘いにホイホイ乗ったり　しないはずだ。
@ENG:

@IDX:36338
@OFF:0x6e9b
@SPK:
@JPN:　きっと御堂さんへの感情が、最後の一瞬ブレーキの　役目を果たしたのだろう。
@ENG:

@IDX:36339
@OFF:0x6ef3
@SPK:
@JPN:　そうでなければ、僕のような男があの状況において　我慢できるはずがない。
@ENG:

@IDX:36340
@OFF:0x6f49
@SPK:
@JPN:　もし我慢できるなら、真魚相手に関係を持ったりは　しなかったはずだ。
@ENG:

@IDX:36341
@OFF:0x6fb0
@SPK:
@JPN:　きっと御堂さんへの感情が、最後の一瞬ブレーキの　役目を果たしたのだろう。
@ENG:

@IDX:36342
@OFF:0x7008
@SPK:
@JPN:　嫌いではなく、好きだから……。
@ENG:

@IDX:36343
@OFF:0x7036
@SPK:
@JPN:　逆なら多分、止まらずに犯ってしまっただろう。
@ENG:

@IDX:36344
@OFF:0x7072
@SPK:
@JPN:　……それこそ、ボロ雑巾のようになるまで。
@ENG:

@IDX:36345
@OFF:0x70bc
@SPK:
@JPN:　傍らに落ちた飲みかけのペットボトルを拾い、一気　にあおる。
@ENG:

@IDX:36346
@OFF:0x7106
@SPK:
@JPN:　温まった液体が喉の渇きを癒す。
@ENG:

@IDX:36347
@OFF:0x7144
@SPK:
@JPN:　でも、御堂さんの胸……柔らかかったな……。
@ENG:

@IDX:36348
@OFF:0x717e
@SPK:
@JPN:　彼女の感触が残る頬に手をやりながら、思わず笑み　を漏らす。
@ENG:

@IDX:36349
@OFF:0x71c8
@SPK:
@JPN:　こんなどうしようもないことを考えられるのだから　僕は確かにもう大丈夫なのだろう。
@ENG:

@IDX:36350
@OFF:0x7236
@SPK:
@JPN:　木々の間から、爽やかな微風が吹き込んでくる。
@ENG:

@IDX:36351
@OFF:0x7272
@SPK:
@JPN:　穏やかな緑の世界。
@ENG:

@IDX:36352
@OFF:0x7294
@SPK:
@JPN:　明日、顔を合わせたら御堂さん、どんな顔をするの　だろう……。
@ENG:

@IDX:36353
@OFF:0x72e0
@SPK:
@JPN:　そんなことを考えながら、蝉の声に包まれる時を、　いつまでも楽しんでいた……。
@ENG:

@IDX:36355
@OFF:0x7453
@SPK:［悠紀］
@JPN:　私、笑ったりしてません！
@ENG:

@IDX:36358
@OFF:0x74a3
@SPK:[\protag]
@JPN:　嘘だ！！　じゃあ、どうして辞めろなんて言うんだよ！？
@ENG:

@IDX:36360
@OFF:0x751c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　辞めろなんて……そんなつもりで言ったんじゃありません！　ただ、あなたのことが心配で……このままじゃ、あなたが壊れてしまいそうに見えたから……。
@ENG:

@IDX:36363
@OFF:0x75e2
@SPK:[\protag]
@JPN:　嘘だ、そんなの！！　今だって僕を嘲笑ってるじゃないか！！分かってるんだ！！　僕には聞こえるんだ！！
@ENG:

@IDX:36366
@OFF:0x76c2
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:36368
@OFF:0x770f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　しっかりしてください！！　誰も笑ってなんかいないんです！
@ENG:

@IDX:36371
@OFF:0x777f
@SPK:[\protag]
@JPN:　御堂さん……。
@ENG:

@IDX:36372
@OFF:0x77c1
@SPK:
@JPN:　あの御堂さんが……殴った……？
@ENG:

@IDX:36373
@OFF:0x77ef
@SPK:
@JPN:　頬に走った衝撃。
@ENG:

@IDX:36374
@OFF:0x780f
@SPK:
@JPN:　弱く小さな痛み……だが、それは僕に冷静さを取り　戻させるのに充分な痛みだった。
@ENG:

@IDX:36375
@OFF:0x786d
@SPK:
@JPN:　あの御堂さんが……。
@ENG:

@IDX:36377
@OFF:0x7990
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいですか？　よく聞いてくださいね？　あなたの思ってることは、みんな悪い夢なんです……。
@ENG:

@IDX:36380
@OFF:0x7a20
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、僕には聞こえたんだ……僕を馬鹿にする笑い声が……。
@ENG:

@IDX:36382
@OFF:0x7a9d
@SPK:［悠紀］
@JPN:　みんな幻ですよ。あなたはきっと疲れてるんです。心も身体も……あのお仕事のせいで……。
@ENG:

@IDX:36385
@OFF:0x7b29
@SPK:[\protag]
@JPN:　あれが、幻……？　そんなこと……。
@ENG:

@IDX:36387
@OFF:0x7b90
@SPK:［悠紀］
@JPN:　耳を澄ませて聞いてください……私、笑ってますか？　笑ってないですよね？
@ENG:

@IDX:36390
@OFF:0x7c0e
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:36392
@OFF:0x7c5d
@SPK:［悠紀］
@JPN:　みんな同じです……あなたのことを笑ってる人なんて、一人もいません。ほら、今、聞こえますか？　聞こえないでしょう？
@ENG:

@IDX:36393
@OFF:0x7d01
@SPK:
@JPN:　……聞こえていない。
@ENG:

@IDX:36394
@OFF:0x7d25
@SPK:
@JPN:　頭の中に響いていた、僕を嘲笑う声……。
@ENG:

@IDX:36395
@OFF:0x7d5b
@SPK:
@JPN:　負の感情を掻き立てる、あの不愉快な声……。
@ENG:

@IDX:36396
@OFF:0x7d95
@SPK:
@JPN:　聞こえるのは、二人の……僕と御堂さんの、確かな　息遣いだけ……。
@ENG:

@IDX:36397
@OFF:0x7df7
@SPK:
@JPN:　御堂さんは、笑ってなどいなかった。
@ENG:

@IDX:36398
@OFF:0x7e29
@SPK:
@JPN:　多分誰も、僕のことを笑ってはいない。
@ENG:

@IDX:36399
@OFF:0x7e5d
@SPK:
@JPN:　僕自身を除いて……。
@ENG:

@IDX:36402
@OFF:0x7ebd
@SPK:[\protag]
@JPN:　フフ……ハハハ……何だ、そういうことか……。
@ENG:

@IDX:36404
@OFF:0x7f2e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　どうしたんですか？　急に笑い出して……。
@ENG:

@IDX:36407
@OFF:0x7f8e
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕だったんだ……笑ってたのも、辞めるのを望んでいたのも、全部僕自身だったんだ……。
@ENG:

@IDX:36409
@OFF:0x8025
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、あの……？
@ENG:

@IDX:36412
@OFF:0x806b
@SPK:[\protag]
@JPN:　大丈夫です……僕はもう大丈夫ですから……。
@ENG:

@IDX:36414
@OFF:0x80da
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……はい。
@ENG:

@IDX:36415
@OFF:0x8169
@SPK:
@JPN:　笑い声……。
@ENG:

@IDX:36416
@OFF:0x8185
@SPK:
@JPN:　僕を苛立たせた、あの嘲笑……。
@ENG:

@IDX:36417
@OFF:0x81b3
@SPK:
@JPN:　そんなものは存在しなかった。
@ENG:

@IDX:36418
@OFF:0x81df
@SPK:
@JPN:　おそらくは、僕の心の弱さが生み出した妄想だった　のだろう。
@ENG:

@IDX:36419
@OFF:0x8235
@SPK:
@JPN:　自分の今の境遇、世間体の悪い仕事に従事している　という後ろめたさ、そして、その仕事の過酷さ。
@ENG:

@IDX:36420
@OFF:0x82a1
@SPK:
@JPN:　その仕事……死体洗いを、心は完全には受け入れて　いなかった。
@ENG:

@IDX:36421
@OFF:0x82ed
@SPK:
@JPN:　心が抱えたジレンマが、幻聴となって現れた。
@ENG:

@IDX:36422
@OFF:0x8327
@SPK:
@JPN:　日頃から心深くに澱のように蓄積されていた鬱屈が　今日の死体に受けたショックで決壊し噴出した。
@ENG:

@IDX:36423
@OFF:0x8393
@SPK:
@JPN:　だから、あんな被害妄想に憑かれてしまった。
@ENG:

@IDX:36424
@OFF:0x83cd
@SPK:
@JPN:　……そういうことなのだろう。
@ENG:

@IDX:36427
@OFF:0x84ed
@SPK:[\protag]
@JPN:　……すみませんでした。あの、怪我はありませんか？
@ENG:

@IDX:36429
@OFF:0x8562
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ええ、大丈夫です。
@ENG:

@IDX:36432
@OFF:0x85ac
@SPK:[\protag]
@JPN:　良かった……本当にすみませんでした。いまさら遅いかもしれませんけど……。
@ENG:

@IDX:36434
@OFF:0x8639
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いえ、いいんですよ……でも、あの……。
@ENG:

@IDX:36437
@OFF:0x8697
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　ああ、もう心配いりませんよ。急に飛びかかったりしませんから。
@ENG:

@IDX:36439
@OFF:0x8794
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……良かった……。
@ENG:

@IDX:36441
@OFF:0x886b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　でも、こんな場所で、いきなり……その、押し倒されちゃったから……ちょっと覚悟しちゃいました……。
@ENG:

@IDX:36445
@OFF:0x896f
@SPK:[\protag]
@JPN:ごめんなさい。
@ENG:

@IDX:36447
@OFF:0x8a36
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいんですよ、誰だって魔が差すことはあるんですから。あんまり恐縮されたら、こっちまで恥ずかしくなっちゃいます。
@ENG:

@IDX:36450
@OFF:0x8adc
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、僕が悪いのは事実ですから。本当にすみませんでした。
@ENG:

@IDX:36452
@OFF:0x8bcf
@SPK:［悠紀］
@JPN:　悪いってことを自覚してくれていれば安心です。それより……本当に大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:36455
@OFF:0x8c53
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　はい。多分……。
@ENG:

@IDX:36457
@OFF:0x8d24
@SPK:［悠紀］
@JPN:　多分？　そんな曖昧じゃ困るんですけど……それに、さっきは急に笑い出しましたし……。
@ENG:

@IDX:36460
@OFF:0x8dae
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ……あれは、全部自分だったんだなって気づいたら可笑しくなっちゃって……。
@ENG:

@IDX:36462
@OFF:0x8e3f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　全部自分？　どういう意味ですか？
@ENG:

@IDX:36465
@OFF:0x8e97
@SPK:[\protag]
@JPN:　辞めさせたいのも、馬鹿にして笑っているのも……結局、全部僕自身だったんですよ。
@ENG:

@IDX:36467
@OFF:0x8f2a
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あなた……自身……。
@ENG:

@IDX:36470
@OFF:0x8f76
@SPK:[\protag]
@JPN:　辞めたいって思ってるのは僕自身、いつまでもウジウジと悩んでる僕を笑っているのも僕自身……。それに気づいたら、妄想にイライラしてた自分が可笑しくて……。
@ENG:

@IDX:36473
@OFF:0x9044
@SPK:[\protag]
@JPN:　……って、御堂さんにとっては、可笑しいで済むような話じゃありませんでしたね……本当にすみませんでした。
@ENG:

@IDX:36475
@OFF:0x9165
@SPK:［悠紀］
@JPN:　もう謝らないでください。さっきのは全部、悪い夢のせいなんですから……。
@ENG:

@IDX:36478
@OFF:0x91e3
@SPK:[\protag]
@JPN:　……悪い夢なら、また見るかもしれませんよね？
@ENG:

@IDX:36480
@OFF:0x92ca
@SPK:［悠紀］
@JPN:　その時は仕方ありません。私がまた、引っ叩いてあげます。
@ENG:

@IDX:36483
@OFF:0x9338
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ！？
@ENG:

@IDX:36485
@OFF:0x93fb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　クスッ……冗談ですよ。
@ENG:

@IDX:36488
@OFF:0x9449
@SPK:[\protag]
@JPN:　なんだ……ビックリした。でも、御堂さんがあんなことをするなんて、ホント、驚きました。御堂さんでも人を叩いたりするんですね。
@ENG:

@IDX:36490
@OFF:0x9582
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、ご、ごめんなさい！　私、ついあんな失礼なことを……。
@ENG:

@IDX:36493
@OFF:0x95f2
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、ホント、意外っていうか……。思わず固まっちゃいましたよ。
@ENG:

@IDX:36495
@OFF:0x96eb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　もう……そんなこと言わないでください。でも、本当にごめんなさい。痛かったんじゃありませんか？
@ENG:

@IDX:36499
@OFF:0x97af
@SPK:[\protag]
@JPN:いや……痛かった、かな？
@ENG:

@IDX:36501
@OFF:0x9884
@SPK:［悠紀］
@JPN:　すいません……。
@ENG:

@IDX:36504
@OFF:0x98cc
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ……そういう意味の『痛かった』じゃなくって……。
@ENG:

@IDX:36506
@OFF:0x99bb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……は？
@ENG:

@IDX:36509
@OFF:0x99fb
@SPK:[\protag]
@JPN:　……いや、いいんです。とにかく、ありがとうございました。
@ENG:

@IDX:36511
@OFF:0x9aee
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……。
@ENG:

@IDX:36514
@OFF:0x9b36
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、そう言えば御堂さん、お時間の方は平気なんですか？
@ENG:

@IDX:36516
@OFF:0x9c25
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……え？
@ENG:

@IDX:36517
@OFF:0x9cc5
@SPK:
@JPN:　いけない、もうこんな時間！
@ENG:

@IDX:36518
@OFF:0x9d73
@SPK:
@JPN:　あ……でも大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:36521
@OFF:0x9dc3
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。もう大丈夫ですよ。笑い声なんか、もう聞こえてませんから。
@ENG:

@IDX:36523
@OFF:0x9e46
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、いえ……そうではなくて、お身体の具合は……。
@ENG:

@IDX:36526
@OFF:0x9eae
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、そっちも大丈夫そうです。まだ少しクラクラしますけど……これくらいなら平気です。
@ENG:

@IDX:36528
@OFF:0x9fbd
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……でも油断は禁物ですよ。私は戻りますが、もう少しこちらで休んでいってください。
@ENG:

@IDX:36531
@OFF:0xa04f
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうします。色々ご迷惑をおかけしました。
@ENG:

@IDX:36533
@OFF:0xa132
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいえ、気にしないでください。では……。
@ENG:

@IDX:36534
@OFF:0xa1ac
@SPK:
@JPN:　御堂さんが姿を消すと、ベンチに腰を下ろした。
@ENG:

@IDX:36535
@OFF:0xa1e8
@SPK:
@JPN:　いつの間にか、こめかみに居座り続けていた重さは　消えていた。
@ENG:

@IDX:36536
@OFF:0xa244
@SPK:
@JPN:　それにしても、先程のことを思い出すだけで顔から　火が出そうになる。
@ENG:

@IDX:36537
@OFF:0xa296
@SPK:
@JPN:　いくら我を失っていたとは言え、御堂さんのことを　押し倒してしまうなんて……。
@ENG:

@IDX:36538
@OFF:0xa304
@SPK:
@JPN:　傍らに落ちた飲みかけのペットボトルを拾い、一気　にあおる。
@ENG:

@IDX:36539
@OFF:0xa34e
@SPK:
@JPN:　温まった液体が喉の渇きを癒す。
@ENG:

@IDX:36540
@OFF:0xa38a
@SPK:
@JPN:　……しかし、意外だった。
@ENG:

@IDX:36541
@OFF:0xa3b2
@SPK:
@JPN:　掌の感触の記憶だけが残っている頬をさすりながら　我知らず笑みを漏らす。
@ENG:

@IDX:36542
@OFF:0xa408
@SPK:
@JPN:　あの御堂さんが……。
@ENG:

@IDX:36543
@OFF:0xa42c
@SPK:
@JPN:　だが、それほど御堂さんが僕を心配してくれていた　ということの証のように思える。
@ENG:

@IDX:36544
@OFF:0xa498
@SPK:
@JPN:　木々の間から、爽やかな微風が吹き込んでくる。
@ENG:

@IDX:36545
@OFF:0xa4d4
@SPK:
@JPN:　穏やかな緑の世界。
@ENG:

@IDX:36546
@OFF:0xa4f6
@SPK:
@JPN:　明日、顔を合わせたら御堂さん、どんな顔をするの　だろう……。
@ENG:

@IDX:36547
@OFF:0xa542
@SPK:
@JPN:　そんなことを考えながら、蝉の声に包まれる時を、　いつまでも楽しんでいた……。
@ENG:

